「萌え町紀行」のスキームについて

スピンオフ
「萌え町紀行」ということで汐入と上大岡について書いてみました(公開済)。その後も、いくつかの町が題材として控えているのですが、ここで、ふと立ち止まってしまいました。
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故郷も萌え町の一つとなるでしょう

漫然と書いていては、一般的な紀行文との違いが不分明になり「萌え町紀行」が続かなくなるような懸念が襲ってきたのです。
各記事のイントロ部分で「萌え町紀行」の世界観は表現していて、自分としては意識的とは思っているのですが、第3回の記事を構想している時に、フレームワークが甘いような気がしたのです。
そこで、「萌え町紀行」の立ち位置を明確にしようという気になっています。
つまり、もともと概念的な設計を行なってから着手しているわけではありません。

「一般的な町紀行」と対比させてみると表のようになります。
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この表で一目瞭然とは思いますが、少し補足が必要でしょう。紀行制作者イメージの愛好家とはどういうことでしょうか。

生活者とはその町に住んでいる人のことです。仕事従事者とは、その町に住んでいなくとも、仕事を通じて深い関わりを持つケースを想定しています。その町が勤務先ということです。愛好家とは、その町に暮らしていなくとも、例えば文芸作品の舞台や作家への愛好の結果、深い関わりを持つに至るケースを考えています。その為の訪問が一回や二回で済まない人達のことです。
仕事従事者と愛好家は、そのまま生活者に至ることもあります。いずれにせよ、一時的な旅行者とは属性が違うだろうと思うわけです。

紀行文の書き手を考察してみたわけですが、今度は書かれたもののスタイルについて検討してみたいと思います。
一般的な紀行ものではエッセイのようなスタイルが多いような気がします。旅先でのことをエッセイとしてまとめ、その結果紀行文になる、そんな感じでしょうか。ルポルタージュはいくら旅先のできごとでも、それはルポルタージュに分類されるように思えます。この場合、ルポルタージュ的な紀行というものは、あり得るのかもしれません。

ここで、私が漠然と構想しているのは、コラム的な紀行文というものがあるかもしれない、ということです。では、コラムとは何なのかの話になりますが、辞書により辿ると文章の短さもその特徴の一つとなるようですが、そんな外形的なことはさておき、批評文のたぐいとしてみたいと思います。その根拠は、となれば、すでに別記事で引用した山本夏彦氏の「異論がなければ意見はないはずである」辺りに至ることになりましょう。異論が批評を構成するわけです。

しかし、文章スタイル論もあまり本質的ではないような気がしています。ここで私が言い得るとすれば、こんな概念整理的なことよりも実際に「萌え町紀行」や「萌え町コラム」を書いてみることの方が重要ではないか、ということです。

こんな理屈ぽいフレームワーク作業も、一旦まとめ終えてみれば、ここに至って新たに、はたと気がつくことが生まれます。
それは「一般的な町紀行」も「萌え町紀行」も、紀行文である以上、制作者が制作時点現在から過去を遡及するものだということです。体験や思考の再構成だということです。旅行しながらの、ほぼ同時的な旅行記作成といえど、書く時点での追体験、回想であることは免れないでしょう。
ということは、「一般的な町紀行」も「萌え町紀行」も、「紀行」という概念にインクルードされてしまうのではないか、と思えてきます。どちらも「〇〇紀行」なわけですからその意味では極めて当たり前の結果になったとも言えます。

しかし、この結論は私にとってとても意義のあることと言えます。これは自分が創作した「萌え町紀行」の概念の裾野を豊かに敷衍してくれるもののように感じられるからです。鳥が風を得て自在に大空を飛び回るように、私は「萌え町紀行」の地平が広がったように感じています。これは紛れもなくフレームワークの成果と思えます。

また、何故私は「萌え町紀行」にこだわったのかということですが、それは、紀行文というジャンルに新たな視点を構成できないものか、ということに尽きます。通常の旅行や観光を経ての紀行文が一般的とすれば、そうではないジャンルの構築ができないものだろうか、という着想です。

最後に似たような用語があるのでこれを使い倒してみようとすれば、「萌え町紀行」を「一般的な町紀行」との対比表の形でフレームワークし、表内に記載した内容が「萌え町紀行」のコンセプトの一端であり、この記事を通して構想している計画全体が「萌え町紀行」のスキームということになりましょうか。

方法論に意識的であること、これはコラム星人としての重要なテーゼに他なりません。
ここから先は、実際の紀行文としての記事を制作していくことしかないでしょう。第3回は鎌倉を予定していますが、さて、うまくまとまるものやら···★