露呈した虎ノ門ニュースの器量

DHCテレビの「真相深入り!虎ノ門ニュース」は、地上波テレビや各社新聞などのいわゆるマスメディアの偏向報道や、フェイクニュースを撃てるネット界の風雲児として、今後ますます期待される番組と思っています。しかし、アメリカ大統領選を巡って思わぬ展開があり、このことについては、視聴者として自分の問題として何らかの「始末」をつけたいと考えます。
その後の推移を見ていると、番組自体の自浄作用は期待できそうもないと、日々その気配が濃厚になっていると感じます。もちろん、あらゆる情報発信を拾いきれませんので、虎ノ門でその類いの番組等が編成、公開されているのかもしれませんが…
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トランプ再選への期待

現在の世界状勢下で何が問題と言って中国です。この国が経済発展すれば民主化するだろう、という期待が誤謬だったことは、いくら反省しても悔やまれる世界的禍根でしょう。マイケル・ピルズベリーやピーター・ナヴァロなどの世界観を背景に、2017年にトランプ大統領が登場しました。
この年の米国大統領選でわが国の報道界は、トランプ当選を予想した数少ない専門家に、脚光を浴びせました。木村太郎氏、三浦瑠麗氏、虎ノ門ニュースで言えば藤井厳喜氏などです。
今回の2020年米国大統領選の予想報道は、4年前の「味」を引き摺っていたと言えましょう。視聴者も報道側も、大いに面白がったのです。さあ今回は誰が当てるのか?こんなゲーム感覚から、昨年の虎ノ門ニュースも始まりました。

代表的なところでは百田尚樹氏が「トランプ再選間違いなし、トランプが負ければアメリカの民主主義は終わる」と豪語していました。国際政治学藤井厳喜氏も同様のトーンでしたし、虎ノ門のコメンテーター全員トランプ推し、だったと言えましょう。今回の場合、トランプ当選予想には、最初からかなり確信的なニュアンスが滲んでいて、これは異常なほどでした。

ところが、大統領選が進むにつれて、トランプ劣勢が伝わるに及んで、虎ノ門ニュース番組内で、対立構造が顕著になってきます。トランプ推し対バイデン推しということではありません。バイデン優勢が明確になるにつれて、この事実を受け入れるべきではないかという上念司氏やケント・ギルバート氏対、トランプ推しをあきらめない百田尚樹氏や藤井厳喜氏という構図です。
コメンテーターが曜日替りで登場する番組です。百田氏出演曜日ではトランプ劣勢は選挙の不正行為があることや、米国の識者がトランプ挽回に動き出しているなどの紹介があり、一方別の曜日の上念氏ケント氏は、トランプを応援するも選挙を冷静に見守る立場をとっていました。
バイデン側に不正行為があるという見方まで出る以上、最後の最後まで、トランプ逆転の可能性が真しやかに語られました。戒厳令を敷いてでもトランプは勝利するだろう、こうまで言っていました。

そんななか、日々シーソーゲーム的な番組報道が展開、加熱していたところ、年末になり上念氏が突然番組から降板するというアクシデントか発生するに至りました。虎ノ門ニュースの視聴者にとって「激震の走る」事件が発生したわけです。

冒頭で私が「思わぬ展開」と述べたその内容ですが、現象面の推移を概観すれば以上のような感じになります。単純化して言えば、大統領選の予想と応援に絡んで何かトラブルがあってレギュラーコメンテーターが一人降ろされた、ということです。
また、当初立ち込めていた当選者予想論への決着が雲散霧消してしまいました。

このできごとに対して、一視聴者として問題は二つあると思っています。
①「大統領選」論の後始末がない
 ②上念氏を降板させた説明がない
もしかしたら何らかの形で①②についてのフォローをしているのかも知れません。私が見落とし、聞き落としているだけなのかもしれません。
しかし、一向にその気配がないのと、仮に②についてホームページなどで記載があったとして「真相深入り」で書ける筈がありません。建前で繕う体裁のお知らせになるでしょう。青山繁晴氏を降板させた時も、よくわからない文面でした。
①については、特別番組を企画し、レギュラー陣ではないメンバーで「後始末」を行なうべき、と提案します。今後その企画が出てくるかもしれませんが、しかし、その「後始末」番組は批評性をもつわけですから、たぶんやれないだろうと推測します。
実は、今回の一連の騒動自体に、客観的でオープンな論争を封殺する性質を伴っているようで、ここが番組の限界だと感じられます。感覚的に、こことても「いやな感じ」でしたし、騒動検証特集は直近では無理でしょう。

よって、①②はないものとして整理しておきたいと感じています。

自浄できない器量

大統領選後の百田尚樹氏などの言動を見ていると、まるで何事もなかったかのようです。1~2回見ていない時もあるので、何らかのフォローコメントを述べているかもしれません。つまり、あって然るべきは、自分が「はずした」という事実認定と、「戦後」フォロー解説的な内容です。しかし、このことがないことは大きな問題だと思っています。各コメンテーターが、それぞれ自分で「始末」をつけにくいこともあり、特集番組で「後始末」すべきと申し上げたいのです。私の印象では、トランプ推しの彼らは、選挙後も同じような論調を繰り返しているように見えます。その姿を見るにつけ、視聴者としては甚だストレスを感じるし、番組の背丈が一気に低くなったようにも感じます。スルーしてどの面下げて今後も論陣張るのかよ、と言いたいわけです。虎ノ門も終わりか、ぐらいのことと感じています。山田プロデューサーは何してんでしょうね。

実は「トランプ推し」には、単に当選予想を超えた思想の問題があると思っています。知らず知らずに予想ゲームではなく、思想戦に転換していった節があります。
その前に、2月下旬現在の私の基本的な認識になりますが
・米国大統領はバイデンである
・選挙は成立した
・不正はゼロではないが今に始まったことではない
・米国裁判所は機能している
ドミニオン方式は機能した
ジュリアーニ、パウエルはアウト
・Qアノンは存在したし日本にも存在した
・日本は自立すべき瀬戸際である
憲法改正急務
アメリカは利用すべき同盟国である

今回の米国大統領選における「トランプ推し」の意味は、対中国戦略としてトランプの利用価値があったからではないか、と思います。我国のヘナチョコ政治家が当てにできないからトランプ頼みになったのであり、それはやむを得なかったと振り返ります。
この構図がある以上トランプを推すことは、私もそう考えます。「トランプ推し」のコメンテーター陣が「私はトランプ勝利予想をはずしました」と言うことは、対中国を思う時なかなか言いにくい面があったのではないか、と忖度します。言い換えれば、中国の覇権展開に対抗する上で、自らの思想上トランプの政策がめざましかったので、トランプにすがったという構図があると見ます。むしろ、論戦中、彼らは中国の米国大統領選挙工作のあらゆる手段を紹介していました。実際それはあったのでしょうし、習近平なら当然やるでしょう。

やや飛躍しますが、トランプ敗北を認めることは中国工作に屈するのか、そういう意味合いに直結する意識があったのではないでしょうか。
それが、バイデン勝利容認派への風当りにつながったのではないか、と思われます。もう一つ、トランプ勝利の根拠として、Qアノンの影響をかぶっていた、とも思います。あれだけ、いわば理由なき確信の強さの背景にあったもの、という意味です。「最初からかなり確信的なニュアンスが滲んでいて、これは異常なほどでした」と冒頭付近で申し上げたことの裏にあるものです。

しかし、番組として節目、区切りをつけるべきだと
思います。百田氏や有本氏や藤井氏は、個人動画の中でなんらかのことは語っているのかもしれませんが、そこまで私は追いかけるつもりはありません。
虎ノ門ニュースとしての番組の品質を問題にしているのです。日々時々刻々と移り変わる現象を追い回すだけでなく、「火曜特集」や「魁塾」などでやっているように、少し引いて見る検証があって然るべきと感じています。

今、虎ノ門ニュースは6年目になるのでしょうか。
数少ない保守系言論番組の存在価値が試されています。視聴者の一人としては、自浄作用に見切りをつけ、この米国大統領選問題については他の番組等で趨勢情報を補完し、バランスをとらざるを得ません。

上念氏を生かせない器量

熱心に裏事情をさぐり上念降板劇を解明したいと思うほどの興味は持てませんが、何か燻っている気配が伝わってきます。
「燻っている」とは、自分が明確に確認をとったものではないのですが、ネットから伝わってくる一定の風向きのことです。この風向きの源流は主に二つです。一つは虎ノ門コメンテーター陣の重鎮が隠然たる力で上念氏排除に動いているようだ、というものです。仮にこれが事実とすると、その重鎮の意見は中国に対抗するためには上念氏もトランプを応援すべきだ、というものになるのでしょうか。上念氏はトランプを支持しつつも、米国大統領選の趨勢は認めるべきとの意見でしたから、これが気に入らなかった、ということになります。その重鎮の挙動は具体的にわかる筈もありませんが、上念氏の言動を見る限り個人名が出てくることはありませんが、相当具体的に何かあったと思わせます。「大統領選の予想と応援に絡んで何かトラブルがあって」と上述しましたが、このトラブルのことです。

実態は知りようもないもののトラブルはトラブルですから、すなわちケンカでしょうか。しかし、自分と意見が違うからとそれを番組全体の問題として排斥するのはいかがなものでしょうか。ケンカは個人間でやって、番組の問題にしないで頂きたい。番組づくりの経験者だとして、番組に口出ししたものでしょうか。これを虎ノ門サイドが受入れざるを得なかったということは、この重鎮に降りられたらこまるという天秤にかけたのではないかと疑われます。

私らは百田氏と上念氏の直接のやりとりを知りようもないのですが、虎ノ門の番組中百田氏は「ある保守系言論人が、ヤバくなってきて自分もトランプ推しだといい始めてる有り様です、ワッハッハ」と言っています。これは、視聴者には上念氏を指していると感じられました。この推測が当たっていて、本気でこれを述べているなら、上念氏がトランプ推しだと知らなかったことになるか、または、捨て台詞的にそう決めつけ罵倒したことになります。
一方、上念氏は個人番組で井上ひさしのDV問題を「某有名作家」という表現でディスり倒していました。これは、誰が見ても百田氏への当て擦りと映る企画でしかありません。
上記の部分が、百田氏と上念氏の対立が表面化して出ている箇所です。
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もう一つの源流は、視聴者が巻き起こしているものです。上念氏と大高氏とが出る回の番組の際、大高氏はトランプ再選を応援していたので、上念氏とは
対立的になります。上念氏は主張が強いので、どうしても大高氏のコメントは抑え込まれがちになったと感じています。しかし、しっかりトランプ支持意見を打ち出していた、と私は見ます。

このやりとりに関して視聴者は、大高氏に同情を寄せ、上念氏がひどいとその番組回にバッドボタンを多数押したようなのです。それがどれだけの数のものか知りませんが、そんなものに虎ノ門側が反応する?そもそも総視聴者のうち、グッドにしろバッドしろ、ボタンが押す人がどれだけいるのでしょうか。百歩引いて番組側虎ノ門側がそれを意識せざるを得ないとして、番組もDHCの営業活動なので無視できないのでしょうか。地上派テレビなどでも番組へのクレームが殺到すると何らかの対応を迫られることはあるようなので、ここら辺りが実質的な影響を及ぼすところなのかもしれません。虎ノ門ニュース再生回数三百万回超えの時代だと言うのに…
また、視聴者が上念氏に「否」を与えたということは、視聴者の脳内もトランプ推しに染まっていたということになります。

結局DHCテレビは上念氏をニュース女子からも降ろしてしまいました。今や、虎ノ門ニュースのレギュラーコメンテーター陣はかなり薄くなっているように見えます。人材確保は急務でしょう。関平氏や竹田恒泰氏の使い回しは見苦しい限りです。
上念氏はあの「過剰さ」が持ち味だったのですが、
それを生かせない、飼い慣らせない虎ノ門は、意外に狭量なものです。我国のためには、もっともっと骨太になって頂かないことには、と思います。今となっては、Qアノンの影が虎ノ門騒動にまで及んでいる、という格好になるのでしょうか。

問われているのは日本

おそらく当面は、バイデン政権でも対中国政策は変わらないという側面と、やはりバイデン政権は手綱をゆるめていという側面の、二面性がに陽に出てくるものと思います。トランプ推しのコメンテーターは後者の現象を嬉々として取り上げるでしょう。結局、アメリカがどうのこうのという以前に、我国の態度の問題に帰着するのではないでしょうか。

対中国政策ではアメリカ父さんの陰で顔だけ出している子供のスタンスは、とっととやめるべきでしょう。バイデン政権はトランプのようなワンマンパワーでは動かないでしょうから、政権組織の政策行動としての振るまいになると思われますし、なっていると感じられます。日本は、自国の利益主張を前面に出して、使われているふりをしながらでいいのですが、アメリカの使えるところは使い倒して腹黒く戦略的に動くべきでしょう。

門田隆将氏のアジア版NATOは実現したいところですが、憲法改正は期待できないと、私は思っています。しかし、改正へ向けて安全保障の有効性上、憲法改正のしかたの工夫の方策と併せて、また、憲法改正ならずとも安全保障上の有効性を高める方向での施策、こういう議論が待たれます。国会において(無理か?)も、虎ノ門ニュースにおいても。

番組の自浄作用がないことを踏まえ、自分の番組への距離感を明確にすることで、今回の騒動に始末をつけようとしているわけです。★

補足
百田氏、有本氏、上念氏3人ともが所属する「視聴者の会」の中でも揉めているようです。ひょっとしたら、こちらが発端なのかもしれません。
昨年春コロナ騒動が始まった頃、外国人の入国を止めるべきだという、百田氏、有本氏の主張に対して、経済を回すことを優先すべきだという、上念氏の主張からして、虎ノ門ニュースの中で対立がありました。

∴本記事は、コラム星人の方針により、ブログでの公開以外に、虎ノ門ニュース宛に実際に投函での投稿も予定しています。記事中にあるように提案したい趣旨に沿ってです。