マスク美人の研究

コラム星人シリーズの、スピンオフ第3弾になります。

最近ではマスクをしていない人がめずらしい存在になりました。すっかり日常生活の必須アイテムとして定着しつつあるようです。店頭にも、やっとマスクが並ぶようになり、様変わりしたのは、洗える手づくりマスクや、マスク手づくりキットも販売されるようになりました。また、ドラッグストア以外の店舗でも、あここでも!というように、思わぬところで取り扱うようになっています。

さて、衛生用品としてのマスクから、ちょっと離れた目で、タウンウォッチングしたらどうなるでしょうか。マスクをファッションアイテムとして見たらどうでしょうか。

まずマスクは顔をおおう、隠す機能が働きます。顔を隠したら美人も何もないじゃないか、と思うかもしれません。いえ、いえ、それは、あなたがマスク美人に気がついていないだけのことです。
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マスクをしていない時、その人を認識するのは、目、眉、鼻、唇等、パーツごとの特徴はあるにしても、全体を総合しての印象からです。スクをすると顔のおよそ半分ぐらいが隠れます。
結果、いわゆるTゾーンの上の部分が強調された格好になります。ひたい、こめかみ、まゆ、眉間、目もと、
このゾーンが、その人を識別するエリアになってきます。

このゾーンの涼やかな印象の方に出会うとホッとさせられます。マスクで顔を隠していても、なお美しい人は間違いなく存在しています。

マスクに似合う髪形は、ポニテ等の髪をうしろに束ねたスタイル、だと思います。どういうことかと言うと、ふつう横顔は目もと、鼻筋、顎、これらで構成される印象で感じます。マスクされた場合は、横顔の中心要素である鼻筋、顎は見ることができません。このため、こめかみや、耳や、うなじが主要になってくるので、耳やうなじをしっかり見せた方がきれいです。マスク美人の横顔は、目もと、ひたい、こめかみ、うなじへと展開するサニーサイドショーなのです。

また、頭の形がけっこう大事な部分で、その全体的な印象が決め手になります。その時、マスクの負の要素は後退していると言えましょう。

一つだけ触れるとしたら、マスクをした場合は、髪飾りの類いはゴテゴテしてしまうので、ない方がよいのではという気がします。もちろん、髪を束ねる為の目立たない色のシュシュなどは別です。この点では、マスクはけっこう強い効果をもつアイテムではないでしょうか。逆にイヤリング等は、マスクの時は、おおいに効果的なアイテムとして感じられます。もちろん、イヤリングに関わらず、イヤーカフやイヤークリップでもよいのですが、すでに触れたように、マスクをした結果、耳のゾーンは主張するエリアとしてスポットライトが当りますので、ここは上手におしゃれしてはいかがでしょうか。わずかにポイント的に効かせるというところがだいじです。

勝手な持論なのですが、女性がイヤーアクセを身につける時というのは、意味があると思っています。わかりやすく言えば「恋する女」が始まったと見ていいと思います。そんな通り一遍ではなく、もう少し具体的に表現するとすれば、男性の視線を意識する何かがあった時や、自分自身を意識して「女」に自信をもった時、と思ってまちがいないでしょう。
ですから、それはシグナルとして明確な表現行為なのです。その瞬間を見抜いている男性はどれだけいるでしょうか。「恋」の結果というような一律に決まっているものではありませんが、ある特定の男性を意識した瞬間にかかる魔術のようなものです。「女心は耳に表れる」のです。とても魅力的なことです。

マスクの色は白が多いわけですが、マスクの白さや、顔がマスクで覆われてしまうので、肌の色は対比的に不利になるかと言ったら、むしろ逆というべきでしょう。

まずマスクの白さと肌の白さは根本的に違います。
マスクの白さに肌の白さが負けるということはありません。マスクは物ですが、肌には質感があり、その下に血液が流れる人間の生命体という「躍動」の外皮部分は、マスクという平板な物体とは、全く異なる深いかがやきを湛えています。さらに、無機的なマスクの質感との対比で、肌の美しさはマスクをした方がむしろ、強調されるのではないか、そんな見方もできそうです。

今、マスクは白だけではなく、多様な色、デザインが出回っています。黒マスクの人もけっこう多くなりました。ただ私は黒は、アヴァンギャルド系というか、「異端」のイメージをぬぐえません。スポーツする人とか、ファッション全体と黒色マスクが調和させられる場合以外は、ちょっと肯定的な活用は浮かびません。

そういう意味では、白のマスクなのだけれども、近づいてみると、レリーフ状になっていたり、レースが施されているデザインは、なかなかに、かわいい
と思います。このデザイン領域はもっと開拓されていいのではないでしょうか。ヴァンギャルドの方向ではなくコンサヴァの方向で、クリエイティブをお願いしたいところです。
白が、マスクファッションのコンサヴァエレガンスへの道かと思います。

また、布地のマスクが出回るようになり、デザインが一気に拡張したようですが、マスクがデザインを主張する場合は、遠目には、顔なのか、何なのかわかりにくく、マスクが歩いている状態になります。さらに、花柄のマスクなどもマスクデザインの方が印象が強く、その結果年齢とのギャップをあらわにしてしまう効果をもつと思います。マスクの端にワンポイント花びら程度はベターですが、不用意に華美なデザインは要注意ではないでしょうか。

顔を隠すという機能に注視すると、ヒジャブやニカブやチャドルといったイスラム圏のファッションの世界に近づくような気がします。ブルカは目まで隠すので、これは理解の外、興味の圏外になります。一方、ニカブの目だけ出すというのは、これはやばい。もちろん、民族衣装の原型のままですと土着的過ぎますので、一皮むくという洗練化されたものを想定しての話です。
一般的に世の男性達がどう思うか、そんなことはしりません。ただ私の嗜好として言えば…と、この辺になると、ややマニアックな世界に足を踏み入れつつある気がしないではありません。

実は今日、駅前商店街で、ヒジャブにマスクをしている外人女性を見掛けました。布マスクでしたが、初めて布マスクが決まっている例に出合いました。ヒジャブと布マスク、ベストマッチングですね。
ここから発展させて、この際、マスクの延長上でヒジャブなどのファッションアイテムを開発してはどうでしょう。この場合、宗教色をいかに減殺するかがミソになってくるかと思います。

たぶんこれはないと思いますが、もし、中東の女性がコロナの罹患率が低いといったデータがあったりするなどすれば、服装の機能がウイルス対策と結びついて、一気に新ファッションカテゴリーが出現する可能性が出てきます。紫外線や花粉を避けて、女性が顔を覆うことはこれまでも行なっています。その着衣感が、病気を予防する感覚と結びつきますので、ここが、広がる要因の一つと想像します。ただ
これからは気温が問題になりましょうか。

考えてみれば、日本にも、江戸時代の頭巾もあるし、昭和の真知子巻きもあるのですから、この方向から、マスクファッションを拡張する戦略はどんなものでしょうか。ファストファッション系からブームを起こすか、オートクチュール・コレクションから広めるかは、やり方はあるでしょう。すでに企画関係者は、考えている可能性があります。

この延長で考えてしまうのですが、マスクに付かない、落ちないリップスティックをぜひ作ってもらいたいものです。マスクをする時も、しっかり口もとをメイクするのです。お茶する時は、自然にマスクは脱がれるので、その時の効果は絶大です。その瞬間、目の前の男性はすてきなショックを受けるでしょう。

その人のマスクがヒジャブなどのアイテムとのコーデにより、着るアイテムに昇格すれば、マスクは、「はずすもの」から「脱ぐもの」に転換してしまうでしょう。

私などの例で言えば、気になっている女性がいてお茶をする機会に恵まれた場合のことですが、マスクの下から、クリムゾン(#DC143C)やカーマイン(#960018)の唇が突然現れたなら、間違いなく救急車を呼ばなければならないでしょう。その想定外の魂を奪う赤色に、ノックダウンとなるでしょう。

話がだいぶ偏執的になってきました。そろそろ、
このコラムにもマスクをするべきでしょうか…★